ポール・マッカートニーとカニエ・ウエスト、リアーナの共作『FourFiveSeconds』、スティングとシャギーの
アルバム『44/876』などジャンルの垣根を超えたアーティスト達が手を組み、新たな可能性を広げていく現代の音楽シーン。
次は一体どんなアーティストが化学反応を起こし、私たちを歓喜させてくれるかと思っていた矢先、異色の2人のコラボレーションが話題となりました。
その2人とは、我らが日本の歌姫「宇多田ヒカル」とEDMの帝王「Skrillex /スクリレックス」です。
宇多田ヒカル × Skrillex
1月18日にリリースされる、キングダム・ハーツⅢのOPテーマソング『Face My Fears』の制作にあたって、手を組んだこの2大アーティスト。今回は、この新曲を通して2人の音楽性を分析してみましょう。
まずは、曲を聴いてみます。リリース前なのでショートVer.ですが、十分な情報量だと思います。
宇多田ヒカル & Skrillex「Face My Fears(Japanese Version)」(Short Ver.)
前半のミニマルでミステリアスなピアノの演奏の中を伸びやかに泳ぐ宇多田ヒカルの歌声に心酔していると、いつもより少し控えめなスクリレックスのダブステップが歌声と絡み合うように、そして争うように1つになっていきます。
英語バージョンもリリースされるので、そちらも要チェックです。
この曲に対する海外の反応
- 宇多田抜きでキングダム・ハーツは成立しないね。ゲームを正しい方向に導いてくれるような声だ。
- ダブステップを残しながら曲を良いモノに仕上がっているね。早くフルバージョンが聴きたいよ!
- いろいろ言う人はいるけれど、この曲は素晴らしいね。宇多田とスクリレックスの見事な調和によって、ゲームのオープニングに新たな輝きが加えられることになるよ。
- それにしても、早くこのゲームをプレイしたいね。この曲と映像の美しさが相まみれるなんて、素晴らしいゲームに決まっている。
海外メディアの反応
大手音楽メディア「Billboard」
『Face My Fears』はスクリレックスが得意とするフィルターの掛かったヴォーカルとバウンスするフューチャーベースのリズムを取り入れたエレクトロニック・バラードとなっている。
そして、映像技術が荒涼としたドロップを更に激しいものへと変えている。スクリレックスの同志であり、このゲームのファンであるポーター・ロビンソンはツイッター上で、この曲を称賛している。
Skrillex
新曲『Face My Fears』を聴いた上で、この機会に個性に富んだ2人の世界的アーティストのこれまでのキャリアを振り返り、音楽性を再確認しましょう。
EDMというジャンルの地位を現在のレベルまでに向上させたアーティストの1人であるスクリレックス。
元々はハードコアバンド「From First to Last」のヴォーカルとして活躍しており、バンドはビルボードチャートにランクインするほどの実力でした。
2007年にソロとして活動を始めた彼が注目を集めたのは「ダブステップ」という2ステップにドラムンベースなどの電子音楽の要素を織り交ぜたジャンル駆使したEDMサウンドが大きな要因びあります。
高速かつ不規則なドラムビートと、彼がハードコアバンド時代に培ったアグレッシブな音楽の感性を巧みに融合させることでオリジナリティーの溢れるサウンドが生まれたのでしょう。
親日家としても有名で、『KYOTO』というタイトルの曲もリリースしています。
昨年はフジロックで来日し、X JAPANのYOSHIKIをゲストとしてステージに招き入れ、X JAPANの『Endless Rain』とスクリレックスの『Scary Mosters and Nice Sprites』をプレイし観客を興奮させました。
こういった、誰も想像がつかなかった演出をやってのけるなど、日本人アーティストとの交流もポジティブに行っている様子です。
トラックをメロウに聴かせるという現代のEDMの傾向に逆らうかのようなEDMを展開するスクリレックス。
YOSHIKIをゲストに招いたことからも分かりますが、このフジロックでのスクリレックスもセットリストはメタルやハードコア、ヒップホップなどを前面に出しており、時代に流されない彼のスタンスが顕著に表れています。
Bangarang feat. Sirah
スクリレックスの代表曲です。
私が彼を知ったのもこの曲がキッカケです。スクリレックスの持つ攻撃的な音楽性とEDMのセンス、遊び心が見事に調和された楽曲だと思います。
ボーカルの「Sirah」はロサンゼルスを拠点とするラッパーで、スクリレックスの作品に度々携わっています。
この曲に対する海外の反応
- 小学校5年生で初めて聴いて衝撃を受けたよ。
- スクリレックスはダブステップの神様だ。
KYOTO (FT. SIRAH)
上でも少し触れた、京都がタイトルとなっている1曲です。この楽曲にもSirahがボーカルとして参加しています。
中盤のメロディアスなパートは「和」意識した音使いをしているようにも取ることができます。
すこしインド音楽のようにも聞こえますが(笑)
この曲に対する海外の反応
- なぜこの手のダブステップを誰も作らなくなってしまったんだろう。
- 良い曲だよね。悲しいことがあっても、この曲を聴くと勇気が湧いてくるわ。
Dirty Vibe with Diplo, CL, & G-Dragon
超攻撃的なビート。
現在のEDMの流れとはまた違ったバイブスで聴く者を高揚させてくれます。
ミュージックビデオもさることながら、民族音楽を連想させるビートは、高速である代わりにライトな音質を採用することで、胃もたれのしない気持ちいい仕上がりになっています。
ゲストには、EDMの重要人物の1人「Diplo」と超人気韓流アイドルグループ「BIGBANG」のメンバー「G-Dragon」、そして同じく韓国の女性アイドルグループ「2NE1」のメンバーであり、ラッパーでもある「CL」を迎えています。
この曲に対する海外の反応
- この曲はスクリレックスがいるから成り立っていると理解している人は少ないのではないだろうか。
- スクリレックスとディプロとCLとG-DRAGONがコラボ!なんで今まで知らなかったんだろう。
宇多田ヒカル
今更わざわざ説明する必要もない日本を代表するシンガー、宇多田ヒカル。
母も1960年代の終わりから1970年代初頭の日本の音楽シーンを席巻した歌手、藤圭子です。以前にも、キングダム・ハーツの主題歌を手掛けるなど、数多くのタイアップをリリースしてきました。
2016年に発売されたフルアルバム『Fantôme』は全米チャート6位にランクイン、Billboardチャートのワールドアルバムチャートで1位を記録するという偉業を成し遂げました。
それだけでなく、彼女が成し遂げた快挙はデビュー当時から数多くあります。
デビューシングル『Automatic/time will tell』で鮮烈なデビューを飾った15歳の少女は、1999年に発売された1stアルバム『First Love』は累計売上枚数765万枚を超え、日本国内の歴代アルバムセールス1位を記録し、今もまだ1位に君臨し続けています。
それ以降にリリースされた2ndアルバム『Distance』と3rdアルバム『DEEP RIVER』もこのセールスランキングでトップ10にランクインしています。
それに伴って「日本ゴールドディスク大賞」「CDショップ大賞」なども受賞経験があります。
2018年には、およそ8年ぶりとなるライブツアー「Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018 」を行い、成功を収めています。
Automatic
彼女の衝撃的なデビューを彩った1曲です。
当時音楽に興味のなかった私も、この曲はMVまではっきりとリアルタイムで何度も視聴しました。というより、普通に生活しているだけで嫌でも耳に飛び込んでくるような社会現象が起きていました。
15歳ながら、少しハスキーで憂いのある声は、現代のアイドルグループの歌声とは、対極的な魅力と空気感があります。
当時、10代の女性がこういったR&B調の曲を歌うこと自体が珍しく、新鮮だったのかもしれません。
この曲に対する海外の反応
- 2018年になっても、私のお気に入りの1曲よ。
- 何度も聴いてしまう。強くノスタルジックになれる曲。子供に戻った気分さ。
光
キングダム・ハーツのテーマソングに使用されていた楽曲です。
2019年に聴いても全く古く感じませんが、今回の『Face My Fears』と聴き比べると、如何に音楽のトレンドが変化したが如実に窺えます。
この『光』がリリースされた頃のリスナーは、10年以上の月日を経て、宇多田ヒカルがこの『Face My Fears』のようなサウンドの中で歌う姿を想像していたでしょうか。
更に10年先、彼女は一体どんな音に包まれて、その歌声を世界に放っているのでしょうか?
楽しみですね。
この曲に対する海外の反応
- 長い年月を経ても、私のフェイバリットの1曲。ミュージックビデオも素晴らしいよ。
- 当時のことを今でもよく覚えているけど、彼女は結婚して幸せだったんだ。それがこの映像に表れているよね。1人の妻として日常に幸せを感じていたんだよ。
- この映像をみたら、『光』を流しながら皿洗いをしたくなる人が私の他にもいるはず。
二時間だけのバカンス featuring 椎名林檎
日本を代表する歌の女王「椎名林檎」をフィーチャリングした楽曲です。
この2人のコラボレーションにも歓喜の声を上げた音楽ファンも少なくはないはずです。宇多田ヒカルと椎名林檎はレーベルメイトの時期があり、シングルマザーという境遇も共通点となり、2人はとても仲が良いそうです。
先日のツアーのスタンスにも椎名林檎の影響があったそうです。
この曲に対する海外の反応
- 一度聴きだすと止まらないよ。歌詞の内容は分からないけど、音楽も映像も素晴らしくて別世界のようだ。
訳もなく涙が出て来るよ。 - この曲がグラミー賞をとるべきだったんじゃないか?曲も歌詞もシンプルに素晴らしいよ。
- ミュージックビデオも息を呑む素晴らしさで、傑作としか言いようがない。
まとめ
一見、全く違った世界で活躍している2人のアーティストが混ざり合うことで、楽曲が新たな色彩を身に纏うという化学変化を音楽を通して肌で感じることができる良い例がこの曲のように思います。
今後、どんなアーティストがコラボレーションし、私たちを驚かせてくれるのか楽しみですね。