2019年のグラミー賞は2月10日(日本時間では2月11日)の開催となり、日本ではWOWOWでの生中継が予定されています。
グラミー賞は、昨年を振り返ってセールスなどの観点から、音楽シーンに大きな影響を与えた作品を制作した人物やグループを様々な部門に分けてノミネートし、各部門ごとに特に優秀なアーティストに賞を授与するイベントです。
参考
昨年はブルーノ・マーズが多数の賞を獲得するという快挙を成し遂げ世間を賑わせました。
ということで、ノミネートされたアーテイストや作品をピックアップしていき、2019年のグラミー賞がどんなものになるのか予想していきましょう。
もくじ
グラミー賞の主要4部門
グラミー賞には主要となる4つの部門があります。
昨年までは、各部門につき5つの作品、もしくはアーティストがノミネートされていましたが、今年から各部門につき8つのノミネート枠が用意されています。この改定が、どういった変化を生むのでしょうか?
誰が受賞するかに注目するだけでなく、授賞式で行われる豪華アーテイスト達による盛大なパフォーマンスも毎年話題となります。
ポイント
昨年のパフォーマンスはケンドリック・ラマ―やケシャやブルーノ・マーズなどの現在の音楽シーンを牽引するアーティストから、U2やスティングといった生ける伝説のようなアーティストが曲を披露しています。音楽フェスのヘッドライナー級のアーティストばかりですね。
2019年はどんなアーティストのパフォーマンスが見れるのでしょうか?
発表はもう少し先ですが、楽しみです!
それでも、やはり聴衆の注目が一番に注がれるが受賞者です。受賞者の名前が発表される瞬間は、会場だけでなく配信を視聴するお茶の間まで独特の緊張感に包み込みます。
各部門のノミネートアーティストは既に発表されていますので、部門ごとに受賞が有力なアーテイストをご紹介しましょう。
Record of the Year の予想
「最優秀レコード賞」と呼ばれるこの賞は、その年の最も優秀なシングル曲の演奏者や製作チームに与えられる賞です。
この部門には、Brandi Carlileの『The Joke』やCardi B feat. Bad Bunny & J Balvinの『I Like It 』などがノミネートされています。中でも注目されている楽曲は・・・
Shallow/Lady Gaga & Bradley Cooper
現在、全世界で大ヒットしている映画「アリー スター誕生」でレディーガガとその恋人を演じるブラッドリー・クーパーがデュエットで歌う楽曲です。
2018年下半期にリリースされ、すぐさまノミネートされました。
ブラッドリー・クーパーが俳優であるにも関わらず歌がうまい!センチメンタルでミニマルなイントロだったのが、一気にサビでレディー・ガガの歌声が突き抜け、曲は宇宙に届くかのような広がりを見せます。
もう後戻りできないところまで来てしまった男女の愛を歌った曲と思われます。
これまでは、特にレディー・ガガの歌声に注目して聴くことが無かったんですが、この曲を通して彼女の歌声に向き合ってみると、素晴らしい歌声だと痛感できます。
グラミー賞とオスカー賞の2冠を手に入れることになるかも知れないですね。
海外の反応
アメリカも音楽メディア「Pitchfork」
「アリー スター誕生」のテーマソングであるこの曲は、レディーガガ本人にスポットライトを当てることとなるかも知れない。この曲で彼女は完全に音楽業界、映画業界双方のスターになるだろう。
This is America / Childish Gambino
※この動画は過激なシーンが含まれているので、苦手な人は解説だけお楽しみください。
リリース直後からかなりの議論を呼んだ問題作。
暖かで陽気なフィーリングで曲が始まったかと思ったら、銃声と共に曲の雰囲気は一転します。全体的にズッシリとした低音が流れ、アメリカの過酷な現状を描写していきます。
アメリカのリアルを突きつけるように、随所で発せられる「This is America」という言葉が印象的ですが、歌詞だけではネイティブでさえ彼が何を表現したいのか分からないほど断片的に言葉が並べられています。
ミュージックビデオと共に再生されて初めて意味を成す作品なのかもしれません。
過去に黒人が被害にあった事件を表現しているなど、歌詞については様々な憶測が飛び交っていますが、チャイルディッシュ・ガンビーノ本人は歌詞について多くを語っていません。
金を稼げ!的なニュアンスの歌詞が多く見られます。
日本人はこういった歌詞を耳にすると「卑しい歌」という印象を受けがちですが、治安が悪く過酷な環境で生活をする人達にとっては「生きろ」とう響きを持つのです。
バイオレスなシーンの後も、MVに登場する人達はダンスを続けます。これは、たとえ虐げられても歌って踊り、日々を楽しむという黒人の歴史のようにも捉えることができます。
因みに彼は、ドナルド・グローバーという名義で俳優やコメディアンとしてのキャリアも持ちます。
海外の反応
アメリカのエンターテインメントを扱うメディア「Variety」
『This is America』はCarldi Bの『I Like It』やDRAKEの『God's Plan』と授賞争いをすることとなるだろう。
有名音楽メディア音楽誌「Rolling Stone」
『This is America』は国民が日頃から行ってきた、体と引き換えに表現と自由を獲得するというファウスト的な呪縛を鮮明に描き出したいる。
The Middle/Zedd, Maren Morris, Grey
『Beautiful now』がCMに起用されるなど、日本でも有名になった世界的アーテイストZedd(ゼッド)
なんと、この楽曲のボーカルMarren Morris(マレン・モリス)にたどり着くまでに多くの大物歌姫をボツにしたというインタビューがYouTubeにアップロードされています。
その歌姫たちとは、
Demi Lovato Camila Cabello Anne-Marie Carly Rae Jepsen Tove Lo Bishop Briggs Bebe Rexha Lauren Jauregui (Fifth Harmony) Daya Elle King
など、物凄いメンツです。
その犠牲(?)の甲斐あって、グラミー賞にノミネートされるまでの傑作となったわけですね。
海外の反応
音楽メディア「the musical hype」
ゼッドとグレイの2人は意外なミュージシャンとマジックを起こした。多才なカントリーミュージシャン「マレン・モリス」とだ。
Song of the Year の予想
「最優秀楽曲賞」です。
「最優秀レコード賞と何が違うの?」と思われる方もいることでしょう。最優秀楽曲賞はシングル曲の作詞者と作曲者に授与される賞です。
この部門にも上で紹介したレディーガガ&ブラッドリー・クーパーやチャイルディッシュ・ガンビーノがノミネートされています。というかほぼ同じメンツがノミネートされています。
せっかくなんで、最優秀レコード賞にはノミネートされていないアーティストをご紹介しましょう。
In My Blood / Shawn Mendes
カナダ出身のShawn Mendes(ショーン・メンデス)
SNSにカバーソングをアップロードしていたことがキッカケで、デビューに至ったという、現代的なサクセスストーリーを持つアーティストもグラミーにノミネートされています。
この『In My Blood』
エレキギターの優しいアルペジオで始まるこの曲は、男の不安定な精神状態を歌った曲です。
心が折れそうになる男。しかし、それはできない。そこで、サビに入り繰り返される「It's not in my blood」
It's not in my blood.→そんなもの僕の血の中にはない→僕はここでダメになる人間ではない!という歌詞なのです。
グラミー賞から少し話が逸れますが、今回紹介したショーン・メンデスとゼッドが最近リリースした曲のタイトルは『Lost in Japan』
日本が舞台となった1曲です。
海外の反応
エンターテインメント全般のレビューサイト「Plugged In」
この曲でショーン・メンデスは何か「リアル」なものを求めている。しかし、この曲自体が彼が求めた「リアル」そのものなのだ。
Boo'd Up / Ella Mai
Ella Mai(エラ・メイ)の楽曲がノミネートされています。
日本ではまだ馴染みのないアーティストかも知れませんが、今確実に頭角を現してきている人物の1人です。
彼女にヒットにはDJ Mustardという敏腕プロデューサーのサポートがあります。彼がエラ・メイの才能に気づきバックアップしたことが彼女のグラミーへの扉を開けたと言えるでしょう。
タイトルの「Boo'd Up」と言うのは、恋人になるという意味です。
海外の反応
海外の総合メディア「The Guardian」
「Boo'd Up」がヒットした要因は、トラップサウンドやラップが大部分を占めるメジャーシーンにおいて、シンプルさとノスタルジックなロマンティシズムとスラングを組み合わせで勝負したことにあるだろう。
Album of the Year の予想
「最優秀アルバム賞」
この部門では、その年に発売された優れたアルバムに賞を授与します。海外ではアーティストの功績をアルバム単位で評価する傾向が強いです。
近年ではデータ配信などが原因で、その傾向も変わりつつあるかもしれませんが、それでもアルバムというのは創作活動に対するアーティストの姿勢を映し出す鏡のようなものとして考えられています。
それでは、ノミネートされているアーティストとアルバムを紹介します。
SCORPION / DRAKE
DRAKE(ドレイク)のアルバム『SCORPION』はスポティファイ上で、2018年の「世界で最も再生されたアルバム」に輝いたアルバムです。
つまり、この部門にノミネートされて当然の1枚というわけです。そして、ドレイク本人も「世界で最も再生されたアーティスト」に選ばれており、彼の「God's Plan」という曲は「世界で最も再生された曲」に選ばれています。
この曲は、今回のグラミー賞の「最優秀レコード賞」と「最優秀楽曲賞」にもノミネートされており、2018年のあらゆるチャートのトップにドレイクの名前がランクイン。グラミー主要4部門では、いずれかの賞を獲得するのではないでしょうか?
海外の反応
アメリカのエンターテインメントを扱うメディア「Variety」
ドレイクは現代には数少ない天才アーティストだ。フックのあるメロディーを判別する耳を持つ。彼の手に掛れば、ありきたりなフレーズが否定しようのないウィットに富んだものとなってしまう。
Beerbons & Bentleys / Post Malone
2018年のフジロックで来日し、インパクトのあるパフォーマンスをしたPost Malone(ポスト・マローン)。日本ではまだ知名度の低い印象です。
しかし、このアルバムで彼の世界的知名度は格段に上がったことは間違いありません。
有名音楽雑誌「rockin'on」が選ぶ2018年のアルバムランキングにもヒップホップアーティストでありながら上位にランクインし、スポティファイの2018年再生ランキングでもドレイクに並んで数多くの楽曲がランクイン。「最も再生されたアーテイスト」でも2位です。
白人ヒップホップアーティストが、ここまで大きな存在となるのはエミネム以来初めてではないでしょうか?
因みに、フジロックでの来日の際、ライブ中に「Shooey」と呼ばれるパフォーマンスを披露し、日本人を驚かせました。どんなパフォーマンスかというと客の靴にお酒を注ぎ、それをポスト・マローンが飲むというモノです。
今回の授賞式でも注目の人物であり、グラミーを通して彼の名は更に世界に轟くこととなるでしょう。
海外の反応
アメリカのエンターテインメントを扱うメディア「Variety」
2018年、ポスト・マローンの人気は爆発した。『beerbons & Bentleys』はスポティファイの日間再生回数記録を更新する快挙を成し遂げたのだ。
Best New Artist の予想
「最優秀新人賞」です。
その名の通り、その年にデビューアルバムを出した新人の中から、私も毎年この部門で新たなアーティストと出会うことになります。他の部門とは少し違った意味で注目してしまう部門ですね。
どんなニューカマーがノミネートされているのでしょう?
Greta Van Fleet
現代のトップチャートはヒップホップやEDMに埋め尽くされている中、彼らのような昔ながらのロックな香りが漂うバンドがこの部門にノミネートされたことは、とても印象的であり、個人的にも嬉しい出来事です。
このGreta Van Fleet(グレタ・ヴァン・フリート)のサウンドは、伝説のロックバンドLed Zeppeliin(レッド ツェッペリン)を彷彿とさせるとロックファンの間で話題になりました。
彼らのノミネートで、このような音楽業界の流れが変わり、ヒットチャートがロックで満たされることになるかも知れません。
Dua Lipa
彼女のことを既にご存知の方も多いのではないでしょうか?
新人でありながら、歌姫として認知されてるDua Lipa(デュア・リパ)。
活動自体は2015年から始めている彼女は、Silk City&Dua Lipaとしてリリースした『Electricity』でも「最優秀ダンス・レコーディング賞 」にノミネートされています。
授賞されなくても、間違いなく今後の音楽シーンを引っ張っていく人物になるでしょう。
海外の反応
海外の総合メディア「The Guardian」
誰も彼女を止められない。長い下積みを経て、2017年は躍進ロンドン生まれの魔性の歌姫にとって躍進の年となったのだ。
有名音楽メディア音楽誌「Rolling Stone」
1YouTubeにカバーソングを投稿していたティーンエージャーも3年前にデビューを果たし、今では、広い音域の声を武器にジャンルを超えて活躍している。
その他の部門もご紹介
主要4部門以外注目アーティストも、まとめてご紹介しましょう。
といっても、その他の部門にはかなりの数のアーティストがノミネートされているので、ここからは、ほとんど私の好みで紹介していきます!
Four Out Of Fiveï / Arctic Monkeys
2018年、約3年ぶりアルバムをリリースしたArctic Monkeys(アークティック・モンキーズ)。
アルバムに収録されている『Four Out Of Five』は最優秀ロック・パフォーマンス賞にノミネートされています。デビュー当時のアークティック・モンキーズを知る人なら、彼らの音楽の変化に驚いたでしょう。
速めの8ビートを刻んでいた10代の少年時代から一転、スローなビートでメロウは雰囲気を持つこの曲は、根底には揺るぎないロックのバイブスを感じることができます。
海外の反応
アメリカも音楽メディア「Pitchfork」
『Four Out Of Five』は逃避行であり、リスナーが抱く人気バンドとしての彼らのイメージを払拭するためのものだ。これにより、彼らは作曲において自由を取り戻すことができる。
Pacific Daydream / Weezer
『Pacific Daydream』はWeezer(ウィーザー)のアルバムのタイトル名です。
このアルバムは、最優秀ロック・アルバム賞にノミネートされています。
個人的にも大好きなバンド。彼らがいなければ。私はこれほどまでに海外の音楽に関心を持っていなかったのではないかと思うほどです。
アークティック・モンキーズとは対照的に、デビュー当時から彼らが持つ個性を常に曲の根幹に起きながら、時代と共に進化していくバンドと言えるでしょう。
近々、新たなアルバムもリリースするので、気になる方はチェックしてみてください。
海外の反応
有名音楽メディア音楽誌「Rolling Stone」
Zombiesの『Time of the season』といったクラシックロックへの頌歌かのような始まりを見せる曲。サビでは唸るギターが全体を包む。悲しみに飲み込まれそうな心の状態を歌った曲だ。
まとめ
こういった授賞式があると、いつもと違った音楽の楽しみ方ができますよね。
特にドレイクやレディー・ガガ、ポスト・マローンはこの祭典の中心なることは間違いないでしょう。
授賞式なんか観てもつまらないという方は、結果だけでもチェックしてみてはいかがでしょうか。これまで知らなかった音楽と出会う良い機会にもなりますよ。